月の鬼

   § : 「月の鬼」
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純和風/ファンタジー/幻想/耽美/陰鬱/麗人/暗殺者/閑吟集/月/狼/胡蝶/鬼/変容/
【短編/完結済/約13000文字/読了時間約26分】
執筆時期はかなり昔のものになります。
当時、私流の「鬼」というものをテーマにいくつかお話を書いていたのですが、その中の一つになります。
ストーリー性はあまりなく、かなり映像的で、書き方もけっこう特殊です。
そんな曖昧なお話ですが、もし興味を持って頂けましたら、宜しくお願いします。





    ひゅううううう
    ひゅおおおおおう

 甲高い女の悲鳴のような風が、しっとりとした闇に満ちた夜気を切り裂いてゆく。

    ひゅおおおおううう……

 風は生暖かく、さやさやと草を揺らし、ざわざわと夜に不気味に佇む木々の梢を揺らす。
 打ち沈むように暗い池の水が、さざ波を表面に這わせ、ゆらゆらと揺れる。

    りーーー……ん

 纏いつくような、奇妙な生命を得たかのような生暖かい風の音に混じり、かすかな、震えるような鈴の音が流れる。

    ひゅおおおおおう
    ひゅううううう……

    りーーー……ん

    ひゅおおおおううぅ……

    りーーー……ん

 さくり。水気を充分に吸った、伸び放題の青い草を、何者かのたおやかな足が踏みしだいた。

    りーーー……ん

    りーーー……ん

 水の中で鳴らしているかのような、ひどく澄んだ、ひどく響く鈴の音は、その人影が腰に佩いた細い太刀の、柄の先に下がった双つの金の鈴から、零れている。
 その人影が歩むたびに、生暖かいねっとりとした風が吹くたびに、金の鈴は揺れ、美しい、けれど何故ともなく、ぞわりと肌が粟立つほどに禍々しい、澄み切った音色を鳴らす。

    りーーー……ん

 風が吹き。
 その人影の、白い、雪のように白い貌が、黒い、黒檀のように黒い髪をなぶられ、夜の闇の中に露わになる。
 ぬばたまのように煌く、艶やかな、黒い瞳。
 紅を引いたように、濡れたように艶めいた、紅い唇。
 白すぎる、落ちかかる闇の下でさえ、はっとするほどに浮かび上がる肌は、極上の練り絹よりも尚きめ細かい。
 白く細いうなじを、いささかけだるいように、やや乱れて覆った緋色の装束は、闇の中にあってさえ、燦然と輝くようだ。
 それは、緋色の地に、黄金と彩り鮮やかな綾糸で刺繍を施した、まばゆいばかりに豪奢な唐織の衣。
 やや着崩されたその裾を、風が掬い上げ、ゆらゆらとなびかせる。
 濡れたような、しっとりと見事な艶を帯びた黒髪は、長い。腰までも届くほどかというそれは、結われていないせいで、吹く風に好き放題に嬲られ、弄ばれている。
 その、艶やかな黒髪に包まれた白い貌は。
 見た者が眼を疑うほど。
 数瞬立ち尽くし、惚と見とれずにはいられぬほど。
 美しかった。
 身体つきも、極めて華奢で、なよやかだ。一見、女にしか見えぬ。しかし、僅かに女と云うには広い肩幅と、女としては高すぎるすらりとした長身のため、かろうじで、そうではないと判断できる。
 だとすれば、男か。
 女と見まごうほどに美しい、美しすぎる男か。

    りーーー……ん

 紅い唇の両端が、くいと、嫣然と吊り上がる。
 そのひとは、女ほどにも細い腰から、そこに帯びた細身の太刀を、鞘ごと引き抜く。
 輝くようにまばゆい、黄金の、太刀。
 その所作に、柄から下がった双の金の鈴が、しゃらんと乱れた音を鳴らす。
 そのひとの、女のもののように白い、細い指が、柄に模様のひとつとして融け込んでしまうほど見事に絡められた、金の鈴のついた赤い紐をほどき、その白い手に絡める。
 闇と風の中、そのひとは、なよやかな細いその手を、すいと持ち上げる。

    しゃらん!

 ふたつ並んで下がった鈴が、かすかな手の動きに、驚くほど大きく鳴る。
 黒い髪を、白すぎる頬に、吹く風に貼り付かせ、そのひとは、さらに数度、鈴を鳴らす。

    しゃらん!

 まるで何かを招くかのように。

    しゃらん!

 まるで何かを焦がれ待つかのように。

    しゃらん!

 強い風に、天空を流れてゆく雲の動きも、流れるように速い。
 ざわざわと、それ自体が命と意思を持っているかのごとく揺れる、木々と草の間に立ち尽くした、紅と黄金の装束を纏う麗人の周りに。
 やがて。
 ぽつりぽつりと、血のような、一対の小さな赤い光が、無数に滲むように現れ始める。
 立ち込める闇の中に混ざる、生き物の、生々しい息遣いの気配。獰猛な、血に飢えた野生の気配。
 黒髪の麗人の周囲を埋めるほどに、赤い光が現れた頃。
 強い風に流された雲が夜空を走り、それまで重く厚い雲に隠されていた、白銀の月が姿を現す。
 さあっと天空から降りそそいだ月光の下に、その姿を晒したものたちは。
 荒々しく、獰猛な、美しい、獣。
 しなやかな、どこかそこに立つ黒髪の麗人にも似通ったものを持つ、美しい獣。
 狼。
 長い黒髪を、風に嬲らせた麗人は、十数頭にも及ぶ狼の群れを従え、月光の下に佇んでいた。

    しゃん!

 短く、金の鈴が鳴る。
 黒髪をなびかせた麗人は、妖艶なその美貌を、一瞬、眩しそうに天空にかかる白銀の月へ向ける。
 月は走る雲に、すぐにその姿を再び隠し、辺りに、闇が降りる。
 そのひとは、袖の中から、ひとつの白い能面を取り出すと、黄金の太刀を、すぐ脇にいた狼へと差し出す。
 狼は、まるで主人に仕える忠実な下僕のように、くいと顎を持ち上げ、傷つけないよう、太刀を咥え込む。
 黒髪の麗人は、白い小面を、白く美しいその貌の上に、そっとかけ、面紐を結ぶ。その白い手に、狼が、太刀を戻す。
 そうして、そこに立っていたのは。
 紅と黄金の装束に身を包み、白い面をかけ、手には黄金の太刀を持ち、背後には狼の群れを従えた、ひとりの魔性だった。
 妖しく、美しく、どろりとした血を思わせるにも似た、蠱惑する紅い蝶にも似た、禍々しく危険な、魔性だった。

    ひゅおおおおおうう
    ひょおおおおおぉ……

    しゃらん

 風の音に、鈴の音が、混ざる。
 天に掲げた白い手に、金の鈴の下がった紅の紐を絡めたそのひとは、まるでそれを通じて狼達と心を通わせているかのように、微妙な、鈴の鳴らし方をする。

    しゃらしゃらしゃら……

    しゃらん!

 強く、鈴が鳴ると。
 ぴくんと、狼達が、その尖った耳を立てた。
 そのひとが、風のように、すべるように、闇の中を、走り出す。
 実際、走っていると云うよりも、風の中を舞っているかのようにしか見えぬ。
 そのひとに付き従い、狼の群れも、足音もなく、疾風の如く、疾く駆ける。
 闇の中を、紅と黄金の豪奢な装束を翻し、長い黒髪をなびかせ、面に素顔を秘め、黄金の太刀を手に駆けるその姿は。
 獰猛な美しい狼を従え、闇の中を風のように疾駆してゆくその姿は。
 まさに、人ならぬもの。
 人外の、妖しくも美しい、魔性の存在。
 そう、もしも見ている者がいたなら、思わせるには足りすぎたもの。
 紅と黄金と闇の魔性。
 それは、夜の下を、美しい獣達を従え、疾く駆けてゆく。


 そこは、街の中ではかなり高級な部類に入る、宿の一室。
 揺れる燭台の明かりに照らし出されたそこでは、一組の男女が、衣を乱れさせて、互いをまさぐり合っていた。
 ひとりは、透けるような肌の、歳若く美しい女。
 ひとりは、なかなかに男前の、恰幅のいい、三十代半ば程の男。
 女は、大きくはだけた着物の襟を、わざとらしく焦らすように、掻き合せて男を見る。
 場慣れした、誘うような、からかうような、色香に満ちた瞳。
 女の滝のような黒髪と、白すぎる肌の対比は、まるで妖のようですらあり。女は、人と云うよりも雪女のようだった。
 女は男の唇に、その真白い細い指を、じゃれるように押し当てる。動物に、待て、をするようなその仕種に、男がむっとする。
 男が何かを云い、女も赤い唇から何かを云い返し、そうしながらも、女の妖艶な眼は色めいて男を見つめている。その白すぎる手は、そろそろと、誘いかけるように動いている。
 美しく、妖魔じみた色香にあふれ、身体も申し分なく成熟した女に、ついに男は耐え切れなくなり、乱暴に掴みかかって着物を剥いだ。
 白い、小山のような胸の豊かなふくらみも露わに、男の腕に押し倒された女の唇から、嬌声のような笑い声が上がる。
 男が女を抱き込み、その白い肌へ、舌と唇を這わせ始めた、そのとき。
 がたん。という大きな音が、几帳に隔てられたその向こうから、した。
 まだ完全には、淫らな波に呑み込まれていなかった男は、はっとして、女を突き放す。すぐ傍らにあった太刀へ手を伸ばし、柄に手をかけたその動作は、間違いなく鍛え抜かれた武人のものだった。
 だが。
 大きな物音と共に外れた格子から、強く吹き込んだ風と共に飛び込んできたものに、男は、仰天を通り越して唖然とした。
 風と同化し、疾風のようにそこに飛び込んできたものたちは、素早く動き、男を取り囲む。そのとき偶然かそうではないのか、燭台が倒されて、ふっと室内から灯が消えた。
 抜いた太刀を、半信半疑の体で、男は膝をついたまま構える。
 灯の失せた闇の中に、男を囲むように光る、幾つもの赤い光。低く唸り、ぐるぐると喉を鳴らす、獣の声。
 壊れた格子から差し込んだ月明かりに、そこにいる四つ足の獣達の姿がくっきりと浮かび上がり、まさかと思っていた男は、ひっと喉を引きつらせた。
 狼。
 美しい、残酷な獣。
 男を威嚇するように、低く唸りながら取り囲む獣達は、紛れもない、それ。
 混乱と恐慌に見舞われた男は、雪女のような女がいつの間にか傍から消えていることにも、気が付かない。
 差し込む月明かりを背に、几帳の脇に幻のように現れいでた人影に、さらに、男は眼を剥く。
 闇に浮く、白い能面。
「夜分に、失礼」
 ややくぐもった、涼やかな男の声が、この異様な状況にそぐわぬ呑気なほどの言葉を、紡いだ。
 人の言葉を聞いたことで、男ははっと事態を悟り、先手を打つようにその人影に向けて太刀を振りかぶった。が、男が身じろぐと同時に、狼達もまた、一斉に動いていた。
 数頭の狼に、至近距離から一斉に飛び掛られては、如何に腕のたつ武芸者でも、ひとたまりもない。
 悲痛な叫び声が上がり、白い能面は、致命傷とならぬ程度に獣達に引き裂かれてゆく男を、身じろぐこともなく、ただ見下ろしている。
 すう、と、その白い手が闇に浮き。

    りーーーん……

 怖ろしいほどに澄み渡る鈴の音に、ぴたりと、狼達の動きが止まる。
 血みどろになって畳に這いつくばった男の前へ、能面の人影は、音も無く歩み出る。
「その御首、頂戴致します」
 白い、刀など握ったこともないような手が、黄金の太刀を、持ち上げ。
 すうと鞘が引かれ、白銀の刀身が現れるのを、男は、凍り付き瞠目した顔で、見上げていた。
 狼を従え、黄金の太刀を持ち、能面と煌びやかな唐織を纏って、顕れた魔性。紅い蝶にも似た、目にした者を魂から蠱惑するもの。
 その、美しくも妖しい、絶対的な死と恐怖をもたらす、禍々しい存在に。
 刃が振り下ろされるのが分かっていながらも、男は、為すすべを持たなかった。
 銀の軌跡が軽やかに一閃し、血の尾を引いて、首が宙を飛んだ。
 どさりと鈍い音を立てて落ちた、眼を見開いたままの生首に、能面の魔性は、僅かな一瞥をくれる。
 すぐに顔を逸らすと、太刀を一振りして刃に絡んだ血を払い落とし、黄金の鞘に収める。
 能面の魔性が壊れた格子へと向かうと、狼達も、血に染まった死体には眼もくれず、後について、音も無くそこから引き上げてゆく。
 一番最後に、きちんと居住まいを正した、あの雪女の如き女が、それに続き、姿を消した。
 あとには、獣の爪と牙とに引き裂かれ、首を飛ばされた、無惨な男の屍が、部屋の中をおびただしい血の色に染め、横たわっているだけだった。


 冴え冴えとした月光の下、そのひとは、その貌を覆っていた白い能面を外した。
 神々でさえ息を飲み、称賛せずにおれぬだろう、玲瓏と澄んだ美貌が、月明かりに青白く照らされる。
 その美しさは、生身あるもの、生あるもののみが持ち得る、生々しい、美しさ。
 確実に散ることが約束されたがゆえの、哀しいまでの、刹那的な美しさだ。
 その周りから今は美しい獣達は去り、黄金の太刀は、いつものようにその腰に下げられている。双の金の鈴も、その柄の先に、ただの飾り鈴となって下がっているだけだ。
 そのひとのたおやかな指が、傍らに揺れていた花に伸び、ふれた。夜と月の下、百華の王と呼ばれる大輪の花弁も今は閉ざされている蕾に。
「存外に牡丹は、不吉なのだそうですよ」
 その唇から落ちた涼やかで耳障りの良い声音に、後からずっと付き従ってきていた女が、首を傾げた。
「不吉?」
「こう、ぽとりと。花が落ちるので。首のようにね」
 花の蕾を、しなやかな指で弄びながら、そのひとは淡く笑う。その傍らに歩を運んだ女が、月明かりのせいなのか、どことはなく寂しげな瞳をした。
「……そうしていつも笑ってばかり。本当はもう嫌なんじゃないの、神楽(かぐら)?」
 神楽。と、そう呼びかけられたそのひとは、夜の闇を封じ込めたぬばたまの瞳で、女を見返す。
「何がです?」
「誰かに利用されるのも、これ以上人を殺すのもさ」
 女は、透けるような瞳で、神楽と呼んだ黒髪の麗人を見上げる。
 神楽はそんな女をしばし見つめ、くすり、と紅い唇を綻ばせた。
 見るもあでやかに、ふわり、と、豪奢な金襴の衣の裾を返す。
「こんな歌があるのを御存知ですか。菖蒲(あやめ)」
 透明な声が、謡うように、独り言のように、紅い唇から流れ出る。
「梅花は雨に、柳絮は風に、世はただ嘘にもまるる……人は嘘にて暮らす世に、何ぞ燕子が実相を談じがほなる。ただ何事もかごとも、夢まぼろしや、水の泡、笹の葉にをく露のまに、あじきなの世や……」
 軽やかに、長い、艶やかに豊かな黒髪を、衣の裾を、風になびかせ。神楽は、可笑しそうに、また鈴の音のように、笑う。
「閑吟集ですよ」
 菖蒲と呼ばれた女は、何も返さずにただ神楽を見つめている。神楽は菖蒲の様子など意にも介さず、優雅なまでの様子で、続ける。
「私はね、菖蒲。この歌が好きですよ。この世にまことなどありはしない。すべて水の泡や露のようなもの……何事も夢まぼろし。それで良いではありませんか」
 ふわふわと、まるで風の中に舞い戯れる、悪戯な妖精のような、そのひとの気配。
 不思議な、半透明ですらあるような、何かしら人ならぬ気配。
 そのひとの蠱惑に満ちた艶やかな瞳が、人の悪い微笑を浮かべて、黙り込んだきりの菖蒲を振り返った。
「ほら。そこでまた、あなたは黙り込む。あなたとの会話が成り立つことなど、滅多にない。なぜいつも黙ってしまうのですか? それほどにお嫌いですか、私のことが」
「……人のせいにしないで。あんたがいつもそうやって、はぐらかすからだよ」
 菖蒲の美しい黒瞳が、神楽の妖しいほどの美貌を、きっとしたように睨み据えた。
 菖蒲は踵を返すと、歩き始めた。
 その背後で、神楽は、ふわりと何処かへ消えてしまう幻のような気配を滲ませたまま、月の光を浴びながら唇を動かす。
「秋風にたなびく雲のたえ間より、もれいづる月のかげのさやけき……ねぇ、菖蒲。どうして昔から、人は好んで、月の歌ばかりを作ってきたのでしょうね。空にかかるのは、何も月だけではあるまいに」
 振り返るまい、と固く思っていた菖蒲だったが、気が付いたら、もう神楽を振り返っていた。
 青い月光の下、神楽は、透けるほどにひどく儚く、幻のように佇んでいる。
 月を見上げている、その美しい双眸も、本当に月を捉えているのかどうか。一見あまりにも無防備な、子供のような横顔で、神楽は月の青く冷たい光を、全身に浴びていた。
 その、幻想じみた光景を見ていると、そのひとに月の光ほど似合うものはない、と、人は誰しも思ってしまう。
 けれど、神楽を長いこと見てきた菖蒲には、そうではないのだということが分かっていた。
 神楽は、昔から、とにかくどこかふわふわとした、幻のような、掴めそうで掴み切れぬ存在だった。
 月の光だけではない。
 神楽は、そこにあるものすべてに、いつも、奇妙なまでにすんなりと融け込んでしまう。
 月光が差していれば、その下に。
 紅い炎が揺れていれば、そのものに。
 白銀の雪が舞っていれば、その中に。
 そこにいる、というだけで、そこの中に、まったくの違和感もなく、いつのまにか融け込んでしまう。
 そういったひとだから、会う人ごとに、神楽に対する印象は大きく異なる。
 けれど、不思議なほどに、誰もがたった一つだけ、同じことを口にする。
 蝶に似ている。と。
 ひらひらとした、妖しく美しい夢幻のようなところが、蝶を思わせると。
 いつも、何を見、何を考えているのか分からない、まるで「人」ではないようなひと。
 澄みすぎた湧き水のように、透明な気配を纏ったひと。
 愚かしいことなのだが、菖蒲は、神楽は本当は「人」ではないのではないかと、時々思ってしまう。
 軽やかに、何ものにも捉われずにするりとすり抜け、ひらひらと舞い遊ぶ、胡蝶の化身なのではないかと、思ってしまう。
 それほどに、そのひとは、「人」の気配を纏っていない。
 普通の人々と、存在している世界そのものが違う、胡蝶の妖精であるかのように、誰にも掴み切ることができない。

        *

    りーーーん……

 月光に青く照らされた、風にさやぐ草の海の中で、神楽は独りきりで、天を見上げている。

    りーー…ん……

 その細い腰に佩いた、黄金の太刀に下がった金の鈴が、風に揺られて儚い響きを震わせる。
 強めの風に、金襴の衣の裾と、長い黒髪が、舞うように大きくなびく。
 神楽は虚空にかかる月を見上げたまま、長い睫毛を伏せる。
 その紅い唇が、何かを呟いた。
 小さな囁きは、風に流され、誰の耳に届くこともない。
 何を思ったものか。
 神楽はたおやかな白い指で、風になびく艶やかな黒髪を集め、ひとつの束にして持った。
 腰から黄金の太刀を引き抜き、白銀に煌く刃を、ぴたりと髪の束に据える。
 すうと白銀の煌きが真横に引かれ、柔らかな絹でも断つようにすんなりと、豊かな黒髪が切られてゆく。
 肩ほどまでに切られた黒髪が、束に纏められていたことから解放され、さあっと強い風に嬲られる。

    りーーーん……

 神楽は太刀を鞘に収めると、白い両の手を天に向けて、切り落とした見事な黒髪を捧げ持つ。
 強い風に、あっという間に、まるで宝石のような黒檀の髪は、天へと攫われて舞い散ってゆく。

    りーーーん……

 ただ天を見上げる神楽は、その透明な瞳に、何を映し出していたのか。
 夜の闇の奥へ、震えるような鈴の音だけが、吸い込まれてゆく。


「神楽……!?」
 神楽を一目見るなり、菖蒲が目を瞠った。
「どうしたのさ、その髪は……自分でやったのかい?」
 すっぱりと、肩のあたりで切られ、揺らめく艶々しい黒髪。神楽はいつもと同じ、それが心からのものなのか、そうではないのかすらも判然とさせられぬ、美しくあでやかな微笑を浮かべた。
「重かったのですよ」
「え?」
 それだけを言い残し、通り過ぎてゆく神楽の後ろ姿。たおやかなそれを、菖蒲は身動けぬまま、見つめていた。

        *

 半蔀ひとつない、暗い、板敷きの間。
 几帳がひとつだけ立てられたその冷たい場所に、神楽は黄金の太刀を抱いたまま、独り座り込んでいる。

    りーーーん……

 太刀の柄に下がった金の鈴が、揺れもせずに、鳴る。
 指をふれさせてもおらず、風も勿論ない中で。
 ただ鈴は、闇の中で鳴り響く。

    りーーーん……

「私を、呼んでいるのですか……」

    りーーーん……

「苦しいですか。哀しいですか。私を誰より憎み、さぞかし怨んでいることでしょう」

    りーーーん……
    りーーーん……
    りーーーん……

 問いかけのひとつごとに、鈴が、鳴る。
 神楽は僅かに首を傾けるように、胸に押し抱いた黄金の太刀に、白い頬をふれさせる。
 白い瞼の閉じられたその貌は、生者というより、死人のようだった。

「哀れなものですね……」
 黄金の太刀を抱いたまま。くすくす、と、神楽は笑みを零す。
 さらさらと落ちかかってきた肩までの黒髪が、その青白い頬と、青白い首筋を隠す。

    りーーーん……

 また、鈴が、鳴る。
 冷たく昏い闇の中、神楽は、いつまでもくすくすと笑い続ける。鈴を転がすような、軽やかな声で。独りきりのまま、いつまでも。

        *

 風が吹き抜ける。
 雲間から差す月光をその身に受けて、ただ神楽は、風に吹かれている。ひとけのない丘の上に、ひっそりと、その身を晒している。
 風が吹き、神楽の纏う豪奢な金襴の唐織の裾をすくう。短い、絹糸のように柔らかな髪を、肩の上で躍らせる。
 ゆっくりと流れてゆく雲に、白銀の月が覆われ、またすぐに姿を現す。

    ウォルルーーン……

 何処からか、物悲しいような獣の遠吠えが、風に乗って夜の静寂に木霊する。

「ただ何事もかごとも、夢まぼろしや、水の泡、笹の葉にをく露……」
 謡うように呟いたそのひとの瞳が、遥かな夜の地平へと向けられたそのきららかな瞳が、何を見つめているのか。それは、いつもと同じように分からない。
「菖蒲。あなたは、この歌がお嫌いですか。あなたはこの世のまことと云うものを信じているのですか」
 気配を消して、神楽をやや離れたところから見つめていた菖蒲は、不意に声を投げられてどきりとした。
 神楽はいつものように、淡く笑み含んだまま、菖蒲を振り返る。
「あなたは心根の真っ直ぐな方ですからね。菖蒲」
 いささか気まずそうに立っている菖蒲へ、神楽は少し皮肉気に云った。
「あ、あたしはっ……」
 かっとなりかけて、菖蒲はなんとかそれを押しとどめる。
 菖蒲は月下に佇む黒髪の麗人のもとへ、神楽よりもはるかに皮肉も露わな笑みを作りながら、歩み寄った。
「何を寝惚けてるんだ。心根が真っ直ぐで、こんな稼業が勤まるものか。さあ、そんな戯言はどうだっていい。今夜も仕事があるんだよ。いつまでそこで油を売ってるつもりなのさ」
「分かっていますよ」
 神楽は菖蒲を見返しながら、はんなりと舞い散る花のように微笑んだ。
「では……参りましょうか」

    りーーーん……

 怖いほどに澄んだ音色で、鈴が鳴った。一度だけ。

        *

「ひ……!」
 闇の中。
 獣達に引き裂かれ、血みどろになった男は、それでも必死の力でいざって、冷たい壁に背中を貼り付かせる。
「やめ、やめてくれ……来るな……こ、殺さないでくれッ……」
 ひきつった声で哀願する、その前方に立つ、亡霊のような影。
 虚ろな白い能面を闇に浮かび上がらせ、煌びやかな唐織を纏ったもの。
 清らかな娘を象った面の下に、素顔は秘められたまま。その白い手が握る黄金の太刀が一閃し、血肉を通わせた身体から首を断つ。
 びちゃりと朱濡れた手が、よどみなく白銀の刃を鞘に収めた。

        *

 女が誘い、男が殺す。
 何度繰り返してきたか分からない手口。
 巡る夜に月は満ち欠けを繰り返す。
 いつも同じことを、繰り返す。

 何も変わらない。
 何も変わらないはずだった。

 その夜、紅い色に濡れたのは、獲物ではなく、美しい狩人の姿だった。

        *

 その夜は月も星もなく、かわりに、土砂降りの雨が降っていた。
 大きな木の根元に身を凭れさせていても、雨粒を避けることはできない。
 ぐったりと瞼を閉じた神楽の、白すぎる頬を、狼達が心配そうに、ぺろりぺろりと舌で舐める。
 瞼が僅かに開き、その頬を舐めていた狼を、その黒い瞳が見た。
 霞むようにその瞳が微笑み、けだるげに細い腕が持ち上がって、狼の濡れそぼった頭に乗る。
 その身を包んだ白い小袖も、金襴の唐織装束も、すべてが鮮やかな真紅に染められている。
 腰に佩いたままの黄金の太刀にも、紅い色が滴り、絡み付いている。
 血の気を失った唇が、僅かに動いた。
「もういい……お行き」
 脇に座った狼は、灰色の瞳を、真っ直ぐに神楽に向けたままでいる。
 他の狼達も、一向に去ろうとはしない。
 神楽はもう一度微笑み、手を下ろすと、苦しげに細く息を吐いて眼を閉じた。
 が、すぐに、また開く。
「神楽……」
 滝のような雨の中、構わず駆けてきた菖蒲が、打ちのめされたような、泣き出しそうな顔で、力なく木の幹に凭れた神楽を見下ろした。
「なんで……」
 崩れるように、濡れ鼠のまま、菖蒲はへたり込んで神楽に縋りつく。
「なんで……! どうして、どうして、刀を抜かなかったんだよ!? 何を考えてたんだよ!」
 悲鳴に近い、泣き叫ぶような声。菖蒲の頬に伝う雫が、雨の雫なのか、涙なのか、激しい雨にそれすらも分からない。

 菖蒲はその眼で、はっきりと見ていた。
 いつもと同じ手筈。失敗などあろうはずもない、刺客としての、暗殺者としての段取り。
 それを、何を考えていたのか。
 いつものように現れた神楽は、素顔を秘めるための白い能面を、かけていなかった。
 腰に佩いた黄金の太刀に、手をかける素振りすら見せなかった。
 その瞬間の神楽を、菖蒲は奇妙なほどに、瞼に焼き付けていた。
 連れた狼達をじっと控えさせたまま、振り下ろされる刃に、その美しい瞳を、閉じようともしなかった神楽を。
 かわそうと動くこともなく、まるで自ら斬られることを望んでいたかのような、その瞬間を。

 神楽を傷つけた、暗殺の対象であった男は、瞬間に逆上した菖蒲の小柄によって、喉を掻き切られた。
 神楽は雨と闇の中に姿を消し、菖蒲は一人、宿に残され。
 死に物狂いで雨の中を駆け、返り血すらも洗い流されてしまうほどに駆け、そうして。
 やっと、血塗れの神楽を、菖蒲は見つけた。

「神楽……」
 神楽自身の血に染まった金襴の衣の袖を握り締めて、菖蒲は問う。
「そんなに……殺すよりも、殺された方が、ましだったの……?」
「分かりません」
 蝋のような顔色でありながら、菖蒲が驚いたほど抑揚のしっかりとした声音で、神楽は返した。
「分からない?」
「云ったでしょう。この世はすべて夢まぼろしだと」
 神楽のかたちの良い唇が、仄かに笑み含む。傷が痛んだのか、僅かに眉をしかめたが、神楽はその微笑を崩しはしなかった。
「……聴こえる聲が、夢か現か。見えるものがまことか幻か。生きているということも、死ぬということも……ここにいる私は、何なのか……分からなくなってしまったんです」
「そんな……だからって。どうして」
「さあ。こうすれば分かるかもしれないと、思ったのかもしれません……」
 自分のことであるのに、まるで他人事のように言うと、神楽はすうと白い瞼を閉じた。その死人じみた青白い貌が、こらえ切れないように歪んだ。
「……すみませんが、菖蒲。……苦しいのです。誰か、呼んで来ていただけませんか」
「あ……」
 そう云われて、やっと菖蒲は、一刻も早くそうすべきであったことに気が付いた。神楽の受けた傷が深く大きなものであったことは、その眼で見ていた。土砂降りの雨でかなり洗い流されてはいるが、相当な量の血も、流れている筈だった。
 離れたくはない。今、神楽を独りにしたくはない。だがこんな場所で、菖蒲の手だけで、どれほどの手当てが出来るとも思えない。
「う、うん……そうだったね」
 菖蒲は、よろけそうになりながら膝を上げた。振り切るように、雨に濡れて額や頬に貼り付いた黒髪を払う。
「待っていておくれね、すぐ里から皆を呼んで来るから。動くんじゃないよ。いいね、神楽」
 神楽は力なく幹に凭れたまま、淡く、淡く、その美しい瞳を微笑ませた。
「ええ……菖蒲」
 菖蒲はそれを見届け、心なしか安堵して、すぐに背を返す。
 滝のように降りしきる雨の中、走り出すと、振り向いても神楽の姿はすぐにかすみ、見えなくなる。
 雨の音だけが、支配する。


 そうして、さほども置かず、里の仲間達を連れて戻ってみると。
 神楽のいた大きな木の根元には、神楽の姿も、群れていた狼達の姿も、なくなっていた。雨に洗われてゆく紅い血の跡だけが、夢ではなかったことを物語るように、かすかに散っていた。
 地面についた血の跡は、激しい雨に流されて、後を辿る手がかりにはならない。
 皆が、抜け忍だ、と色めき立つ中で。
 手に手に得物を取り、篠突く雨をかいくぐって、辺りへ散ってゆく中で。
 唯ひとり、菖蒲はその場に、立ち尽くしていた。
 確かに神楽がそこにいた跡を、次第に洗い流されてゆく血の跡を凝視しながら。

        *

 抜け忍となった者は、いつの世であれ、生き残るためしがほとんどない。それほど執拗に放たれた追跡の網にも、とうとう神楽は掛からなかった。
 あれほどの傷で、忍ものの追っ手を振り切るなど、かなおうはずもないと云うのに。
 神楽は誰の手にも、掴み切れなかった。
 するりとすり抜け、ひらひらと舞ってゆく、紅い蝶のように。

        *

   ひゅおおおお
   ひゅおおうう……

 女の悲鳴のような風が、吹いている。
 風は止む事がなく、天の雲を押し流し、かかる白銀の月を覆い、また引いてゆく。
 ざわついた木々のざわめき、草のさやぎは、魑魅魍魎が闇の中を跋扈しているかのような不気味なおぞましさを、聞く者にもたらす。

    ひゅうううう……

 耳につく風の音に、菖蒲は、闇の中で閉じていた眼を開いた。
 ひとり寝の褥は、どれほど時間が経っても、冷たく、ぬくもることを知らない。

    ひゅおおおううう……

 切り裂くような、風の音。
 菖蒲は、開いた眼を、必要以上にきつく閉じる。
 ざああっと、走る風に木々の梢が鳴る。それらの音が、凍える夜の孤独をいっそう深めてゆくように、菖蒲には感じられた。

    ひゅうううう……
    ひゅおおお……

 訪れぬ眠りに、何度寝返りを打った頃か。

    かたり

 小さな。
 よほど耳をそばだてなければ分からないほど、小さな。
 音が、した。

「――!」
 忍びものの習性で、菖蒲は瞬時に跳ね起き、褥の下に潜ませておいた小柄を握る。
 音がしたのは、すぐ表の、縁側から。

    ひゅおおおお……

 気配も、音もなく。
 菖蒲は褥から離れ、障子へと忍び寄る。
 手を、かけると。
 一息に、障子を開いた。

    ひゅおおおおっ!

 途端、強く風が吹き込み、菖蒲の髪を、襦袢の裾を、乱暴に巻き上げ、嬲ってゆく。
 手をかざし、目を庇うようにして、物音のした縁側を見下ろした菖蒲の眼は。
 そこに、ひとつのものを捉えた。
 風に僅かにかたかたと揺れながら、置き忘れたもののように、そこにぽつりと置かれたもの。紅い紐が歯止めをするように囲っている、小さな金色の丸いもの。
 ひとつだけの、鈴を。

「!!……」
 息を呑み、菖蒲はしゃがみ込んで、美しいそれを拾い上げた。
 ちりちりん、と、取り上げた瞬間に、手の中でそれは乱れた音色を響かせた。
「これは……」
 見間違いではない。気のせいではない。
 はっと菖蒲は顔を上げ、裸足のまま、縁側を飛び出した。
「神楽!」
 喉から出たのは、悲痛な呼び声。
「神楽だろう!? お願い、出てきて! あたしに……あたしに、もう一度あんたの姿を見せて。あんたの声を聞かせておくれよ……神楽!」
 強い風が容赦なく吹きつけ、菖蒲の髪を、襦袢を、もみくちゃにしながら天へと吹き上がってゆく。血を吐くような叫び声すら、掻き消して。
「今度は……今度は、あんたの言葉を、きちんと聞くから……お願いだから……神楽……」
 菖蒲の声に、何一つ、応えるものはなく。
 菖蒲の膝が、がくりと崩れ、その胸に、きつく、きつく、握り込まれた金の鈴が抱き締められた。
 ちりん、と小さく、やけに可愛らしく。
 鈴の音が、鳴った。

       *

    ひゅおおおお……
    ひゅおおうううう……

 風が、吹く。
 風は木々の枝葉をざわざわと揺らし、ざあっと青い草の上を走り抜け、天空へと、舞い上がる。

    ひゅおおおおう……
    ひょおおおお……

 天にかかった白銀の満月が、冴え冴えと、地上を照らす。

    ひゅおおおお……

    ウォルルルーーン……

 風に混じってどこからか届く、月に哭く、哀しげな獣の声。

    ひゅうううう……

    りーーーん……

 風を追い駆けるように、風に混じるように。青く深く沈んだ暗い森の中に、幻のような、ひどく澄んだ、鈴の音が響いた。

    りーーーん……

 森を抜け、黒い、ごつごつとした岩の上を渡ってゆく。震えるような、透き通った鈴の響き。

    りーーーん……

 幻のような鈴の音が、どこからともなく鳴り響く。
 風の中にまぎれ、獣の声と調和する。
 ただ風は鳴り、月は仄かに焔を纏い、木々は語らず、そこに佇む。
 岩肌の上に、豪奢な唐織が、翻る。

    りーーーん……

 鈴が鳴る。

 風は今宵も、何者に捕らえられることもなく、吹き抜けてゆく。

 白銀の月の焔を受けて、黄金の太刀と小さな飾り鈴が、闇に燃え上がるように光った。
 人知れず佇む、絢爛な夢幻のように。


(了)


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<あとがき>


このお話は、前書きにあるよう、かなり昔に執筆したものです。
ひょんなことから過去に書いたお話がいくつか発掘され、とっくに処分したものと思っていたので自分でも驚いたのですが、その中の一つです。

今ではまず取り扱わないような耽美的な人物が主人公でもあり、展開もかっちりとしたものではなく、様々な意味で私のお話としては珍しいのではないかと思います。
擬音の多用、やたらに区切られた散文的な言葉の連なりは意図的なものですが、さぞかし読みづらかったことでしょう。申し訳ありません。
しかしこれも記念と、最低限の手直しの他は、ほぼ原文のまま掲載しました。

作中に出てきた「閑吟集」とは、室町時代くらいの古い歌謡集です。
能楽の題材としてもよく用いられ、人の孤独や愛欲、世の無常などを切々と歌っています。

私なりの「鬼」を書いてみよう、と思い立った当時考えたのは、題材として元々興味を持っていた「能」を絡めることでした。
「神男女狂鬼」と、能楽の一連の様式は表現されます。
神から始まり男となり女となり物狂いを経て鬼と成る。和の闇と彩、醜悪と美とが凝縮されたような能楽の様式には、あらためて日本語や日本文化の美しさや妙を見る思いです。
今回のお話では小面や閑吟集など、象徴的な小道具にとどまっていますが、そのもの能楽師を主人公にした長編を書いたこともあるなぁ……と、ふと思い出しました(こちらに関しては、探してはみたのですが原稿を既に紛失していました)。

以上、なんだかとりとめもないあとがきになってしまい申し訳ありませんん。
お読み下さった方、本当にどうもありがとうございました。